【協会】オーストラリア旅日記 vol.1


■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~

『ターニングポイント』
 
昨日iPhoneを見るとLINEでメッセージ。
何も珍しいことではない。日常の一部である。
ただしメッセージは南半球オーストラリア滞在中の友人からだった。
「ワーホリに来ているけれど、仕事が見つからない、
知り合いもいなくて不安」とのこと。
 
そんな姿が過去の自分を見ているようだった。
 

『2010年7月26日:貧しい。貧しい。
今日はATMからお金が出せない、という夢を見た。』
 
私がワーキングホリデービザを取得して渡豪し
お金に困っていた時期に書いた日記の一節である。
 
恥ずかしいがあの時は必死だった。
一週間で稼いだバイト代はそのまま週払いの家賃に消える。
それ以外は貯金を切り崩すという状況だった。
そもそも、親の反対を押し切ってきたオーストラリア。
そう簡単に仕送りをお願いしたくない。
 
こんな時は困った時の神頼み「助けてください。」
人生不思議なもので、こういう時最高のタイミングに
助け舟がやって来る。
 
「わたしのバイト先で人探してるみたいだけど来ない?」 
ある日バイト先で接客中にタイ人のお客さんに声かけられた。
突然に、しかも初対面、何の会話もしていないのに。
 
聞くと仕事先はコーヒー屋さんで時給は20ドル(約1700円)。
コーヒーが苦手な私も今はそんなことを言っている場合じゃない。
生活がかかっているんだ。
 
翌日には履歴書を持ってお店に向かってる自分に
我ながら驚いた。こんな行動的になれるの意外だった。
 
それから数日後、面接をしてその場で採用。
聞き間違いだと思い確認すると、確かに働けるそうだと。
本当に良いのか?あれは、本当に不思議な体験だった。
 
面接をしてくれたオーナーやマネージャーの
言っていることがさっぱり分かっていないというのに
雇うとはどういうことなのか。
正気か?もう嬉しいやら申し訳ないやら
色んな感情が混じって複雑な気持ちで帰ったのを覚えている。
 
そしてこの新しい仕事が私のオーストラリア生活を
良い方向に導いてくれるきっかけとなった。


今思えば、生活にしんどくて悲壮感漂った顔をしていたのを見かねて声をかけてくれたのかもしれない。
今の自分があるのは、あの時出会ったお客さんのお陰でもある。
 
後日、ユニフォーム姿であの時のお客さんと
再会出来た時の感動は一生忘れない。
 
人と人との出会いが点ではなく線で繋がった瞬間だった。
 
冒頭、LINEでメッセージを送ってきた彼女には
「大丈夫。何とかなるから。」
と投げ返した。
 
 
 
Writer:石井美紀(Ishii Miki)
1986年生まれ。大学卒業後、ATJ(Assistant Teacher of Japanese)プログラムに参加。
メルボルンの高校で1年間日本語教師アシスタントを経験後、ワーキングホリデーで滞在を1年延長する。滞在中に、たくさんの人の温かさや大自然の壮大さに魅了され、すっかりオーストラリアの虜になる。トマトソース(ケチャップじゃない)をたっぷりかけたアツアツのミートパイが思い出の味。現在京都ユースホステル協会職員。

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