■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~
『ポロリ、エディンバラ』
英国続き。
今回、ロンドンともう一箇所、訪れた場所がありました。
スコットランドの首都・エディンバラです。
私は、かの有名なミリタリータトゥーではなく、
並行して開催されているフリンジ(パフォーミングアートの祭典)を
楽しむことにしました。
以前、日本を代表するパントマイム・パフォーマーの
【がーまるちょば】が参加した際のドキュメンタリーを
TVで観ていたのですが、現地は想像以上の熱気で盛り上がっていました。
エディンバラ城を下り、ロイヤル・マイルをしばらく進むと、
フリンジのメイン会場に辿り着きます。
セント・ジャイルズ教会の周辺、その道の上では、
いくつものブースが設置され、数十分単位でコントやミニコンサート、
パフォーマンスが替り番子に繰り広げられ、
複数いる大道芸人の周りには、それぞれに熱気十分な人だかりが…
人の多さにも驚きましたが、どの集まりも、
大道芸人の一挙一動に湧いて温かい人情味がありました。
フリンジはストリート上のみで行われているのではなく、
エディンバラにある各地のさまざまな会場で
パフォーマンスが観られるのですが、ロイヤル・マイルの
道にはそれぞれのパフォーマンスの宣伝のため、
役者さんやパフォーマーが本番の衣装を身にまとって
立っているのが賑やかさに拍車をかけています。
「せっかくだから、何か飛び込みで観劇しよう」と
心に決めて道を歩いていると、
目映い純白が目に飛び込んできました。
イケメンの 女 装 !(しかもウエディングドレス!)
完全に即物的な一目惚れでしたが、麗しい彼らに心奪われた私は、
彼らに話しかけ演目のフライヤーと、会場案内を受け取りました。
午後7時。
5£で購入したチケットを手に会場に入ると、
すでに主人公の役者さん(写真の髭をたくわえたお兄さん)が、
パンツ一丁という出で立ちで役に入っていました。
こじんまりとした会場はすでに照明が薄暗く落とされ、
三方を段状に組まれた椅子で囲まれたステージに
スポットライトの明かりが当てられていました。
街で見かけたウエディングドレス姿といい、
パンツ一丁という出で立ちからも大体想像していたのですが、
内容を要約すると、主人公のゲイの男性が結婚を前に、
新しい恋に目覚めてしまい…そして浮気がバレてしまい…といった内容でした。
出演者も主人公・婚約者・恋人の男性3名のみ。
途中、ダンスのパフォーマンスが取り入れられており、
思わず身体がリズムに乗って動きそうになるような演出もありました。
元々LGBTの映画等に興味のあった私は、
なんてドンピシャリな演目を選んだのだろうと、
観ている最中も観終わった後も、興奮を噛み締めていました。
ただ、この演目が一生モノの体験になったのには、
もう一つ理由があります。
「僕を愛しているというなら、
証拠に真っ裸になってみろ。×××を出せ」
と、公園の真ん中で恋人役が
主人公に要求するシーンがあったのです。
私の心境はそのとき「いや…さすがに…実際には…」と、
主人公がどうするべきか思案する気まずい間の中、
手に汗握って見守っていました。
が、
思っていた通り、全裸を披露してくれました。
私は正直リアクションに困ったのですが、会場は大ウケ…!
私もその笑いに釣られ、一緒になって笑いました。
これがもし日本であったなら、皆んな真面目に見守っていたんじゃ…と、
凍てついた空気を想像するとちょっとゾッとしてしまいました。
私のホームステイ先のホストの女の子は、私と年齢も近く、
職業はフランス語の先生のバイトをしながら、
パフォーマーとして不定期で舞台に上がっていました。
その彼女に「今日、とある演劇の最中に、男性の×××を見たんだけれど、
ああいう演出はこちらでは珍しくないの?」と思わず尋ねてしまったのですが、
その子曰く「私がその場にいてもすごくびっくりする!」らしく、
レアな演出みたいでした。
「ポロリも見られる」というのが、
すっかり私の中のエディンバラ・フリンジの印象に…。
何はともあれ、パフォーミングアート、引いてはアートが
あれほどの熱気やパワーに満ちて、街のそこかしこに
根づいている光景には忘れられないものとなりました。
Writer:おざわ ありす
1991年生まれ。生まれてはじめて訪れた国は、
高校時代に美術研修で訪れたドイツ・ベルリン。
アート、デザインを通して社会を
よりよくしていくような取り組みに興味があります。
日本、京都のアートシーンに興味を持って宇多野ユースホステルへ
訪れる方の案内窓口のような存在になりたいと日々勉強中。