【協会】旅、時々ユースホステル『モンゴル 乗馬の旅(前編)』



■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~
『モンゴル 乗馬の旅(前編)』


それは去年の大学2回生の夏、梅雨明けのカンカン照りの空の下、
テスト期間が近づいていたこともあり、
億劫な気分になっていたとある平日の昼休みのことでした。

「大草原を駆け巡る! モンゴルで乗馬体験」

何気なく壁に目をやると、このように書かれたチラシが
私の瞳に飛び込んできました。

頭の中はテストのことだらけで、
夏休みの予定など何も考えていなかった当時の私は、
「モンゴル」「乗馬」という、
普段見慣れないパワーワードに強く惹かれました。

モンゴルなんて、一生に一度行くか行かないか、
てぐらい秘境の地だし、どうやらゲルに泊まって
現地の人とも交流できるみたいだし…
うん、何だか面白そう!

もともと旅行が好きで、この夏も海外に行こうかなぁと
迷っていた矢先、優柔不断な私はほぼ即決で、
この夏はモンゴルに行こう!と決めたのです。

後になって思うのですが、
このチラシに巡り合えなければ、
私は退屈で平凡な夏休みを送っていたかもしれません。

それぐらい、このモンゴル乗馬の旅は
わたしにとって濃い経験になりました。

目まぐるしい大学での月日は流れ、憂鬱だったテストが終わり、
待ちに待った出発の日がやってきました。

驚くことに、なんとこのツアー、日本から現地までの往復は
飛行機を使わず、移動手段は船と電車のみで、
モンゴルに着くまで2泊3日費やすという、
最初からまさしく「旅」のような道のりだったのです。

船で寝泊まりするのは初めてだったので、
どうなることやら、と心配してたのですが、
同じ参加者がたくさんいたので、
トランプやカラオケなどしてるうちに打ち解けてきて、
船旅という非日常な空間にもいたことから、案外楽しめました。

船で仲間と戯れている間は、ゆーっくり時が流れているようで、
テストやらバイトやらで忙しかった日々を
忘れさせてくれるような、本当に楽しい時間でした。

船と電車で中国の瀋陽市という場所に到着。
そこから寝台列車で1泊し、内モンゴル自治区に到着。

市内のホテルで1泊した後、長いバスでの移動を終え、
ついに、ついに!私たちが3日間乗馬でかけめぐる大草原に到着です!



初めて見た異国の大草原。
太陽を遮るモノはほぼなく、ましてや標高も高い。

直に夏の太陽が私たちに降り注ぎ、
日光のせいで顔がチクチクしました。

しかし、湿度が低いので風が涼しく、
確かに暑いと感じるのですが、不思議なことに
汗は全くかかず、長そででちょうどいいくらいの気候です。

現地の遊牧民の方とあいさつを済ませ、
早速、3日間行動を共にする馬選びが行われました。



馬はモンゴルの家畜の中でも、社会的地位の象徴的な
性質を強く持った家畜として考えられており、
馬に乗り草原を自由に疾走することは、
モンゴルの牧畜民にとって大きな誇りでもあるそうです。

牧畜民と馬は切っても切り離せない存在、
生涯を共にするパートナーでもあります。

だからこそ、例え3日間でも信頼を少しでも築いていけるよう、
馬選びはこのプログラムの中で一番重要な儀式でもあるのです。

…ただ、なんせ参加者が50人もいるので
「あなたコレネ。ハイ、次のヒトー」という感じで、
現地の方の直感?でどんどん馬が選ばれていき、
私はというと、10秒ほど考え込まれた後、
ハンサムな1頭の馬が連れてこられました。



名前はポニニちゃん。(勝手に命名)
あっけなく速攻で決められたので、
ポニニちゃんに「何でアンタなのよっ」て思われてないか心配です。

いや、その心配が的中したのか、ポニニちゃんの上に載った瞬間、
落ち着きがないように軽く体を揺らされ、
乗馬経験がほとんどない私からすると、振り落とされそうでホント怖かったです。

やはり乗る人の緊張や不安というのは、馬に伝わるのでしょうか。
騎士が怖がったり恐れていれば、馬も当然不安な気持ちになります。

私は若干ビビりながらも、ポニニちゃんの首元をなでたりして、
ポニニちゃんと自分の気持ちにもドウドウ、と落ち着かせました。

「私たち、大丈夫かしら…。」

多分この時両者が同じことを考えたと思います。

そうこうしているうちに、乗馬の旅がスタートしました。
家畜として飼われている馬は基本、集団行動をとります。
なので先頭の馬が走り始めると、それに続く集団の馬はみな駆け足で前を追いかけます。

ポニニちゃんも駆け足を始めました。
「…振動がすごいなぁ」
乗馬一発目の私の感想です。

文字通り、上下に身体が振動するんです。しかも小刻みに。
慣れている人からしたらリズムをつかめるのでしょうが、
私はなかなかリズムがつかめず、下半身が、くらに小刻みに当たるので、
痛いというよりは体力が奪われ、開始早々ゼエゼエ言ってました。

駆け足のまま2時間ほど移動し、休憩をとったあと、
次は早足に移りました。

早足とは、先ほどの駆け足に比べもう少しスピードが上がります。
さっきの駆け足で、私の下半身はガクガク状態で、
これ以上に速くなるのか…と軽く絶望していたのですが、
いざ早足をしてみると、、
「お、これは…、た、楽しいいいい!!」
初めて乗馬を楽しめた瞬間でした。

先ほどの駆け足よりも馬の走るリズムがつかめて、
それに合わせて自分の身体も動かすのですが、これが案外難しい。

しかし、馬と自分の息がぴったり合った瞬間、
そこには「ポニニちゃん」も「私」もいなくなったんです。

ひとつの生き物のように二人が動いて、
呼吸を同じタイミングで吐いて、息が合えばさらに早くなり、
まるで一心同体という言葉そのもので、共に風をあび、走る感情を共有しました。

さっきまで怖がっていたのが嘘のよう。

慣れてくると視界が開け、そこには地平線へと続く大草原の中、
風と馬の蹄の音しかしませんでした。

周りには何もないです。

でも私の中には、大草原の感動、足の痛み、乗馬の喜び…
様々な感情がふつふつと湧いているのが分かりました。

何だろう…上手く表せないけど、都会にいるときのように、
あふれんばかりのモノに生かされてるんじゃなくて、
私は今ここで、馬と自分の意思だけに従って生きているんだな、と。

人間の本来の「生きる」姿に少し触れることができた気がして、
色々考えながら1日が終わりました。

馬と自然と人。三者が一体になる瞬間を
身をもって実感した1日になったのでした。



満点の星空を眺めながら夕食をとり、就寝。

そして2日目の朝がやってきました。
私は起きて早々ある異変に気付きました。
…全身筋肉痛です。

手足、胴体、どこを動かしても痛い。
歩くだけでも痛い。初めての経験です。

この状態で乗馬か…。
私&ポニニちゃん「今日大丈夫かしら…」

後編へ続く。


Writer:坂田 泉
京都市在住。20歳のインターン大学生。
高校の頃はワンダーフォーゲル部で山を登ってました。
現在は旅行にハマっており、たまに海外に行きます。
何でも挑戦したい人間です。

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