【協会】イギリスから見えた福祉と労働


■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~

『イギリスから見えた福祉と労働』



ここ最近「仕事が忙しい」ことを言い訳に、古いアルバムを見たり
思い出話もしなくなったなぁと思い、ふと、昔滞在したことがある
イギリスのことを振り返ってみようと思った。

◆イギリスボランティアホリデー
もう10年も前になるのかと少しショックを隠しつつ、2004年に
イギリスボランティアホリデーというものでイギリスに1年間滞在した。
これは簡単にいうと、イギリスの福祉現場で働きながら生活をするというもの。

活動期間中の滞在と食事が無料で提供され、生活補助金も
でるので、住み込みアルバイトのような感覚。

障害のある人たちや子どもたち、高齢者の方々に日常の介護、
生活補助、アクティビティなどをしながら英語や福祉を学び、
海外生活を楽しむことを目的にしたプログラム。

そこで僕は、地域で暮らす身体障害のある方のお宅で6カ月、
てんかんの方のグループホームで6カ月、介護アシスタントとして働いた。

◆島国イギリスの文化
イギリスは、日本と同じ島国。日本も古くから島国根性という言葉が存在しているように、イギリスにも同じく島国で自国以外の他の国を”海外”のような考え方をするような考えがある。

しかし、イギリスは他の国よりも国際化と人種のミックスを遂げている国なので、日本よりは、外国人や移民に対して国際的な考えを持っている。

イギリス国内の社会保障や福祉を維持するためにも、海外ボランティアや東ヨーロッパ圏、アフリカの労働力で補っていることがよく見らる。

イギリスでも、福祉の仕事は日本と同じで、きつい、きたない、給料安いといういわゆる3Kの労働環境にあり、イギリス人はあまり働きたがらない。

なので、海外の労働力に頼ってイギリス国内の福祉を回している。これは日本でも
フィリピンやインドネシアからスタッフを雇っているのと同じ状況です。

今後、高齢社会が進行する中でもっと国外からの労働者に頼っていかないと
日本国内の福祉産業も回らないでしょう。

僕がイギリスで働いていた実感としては、たまたまかもしれなが、イギリス人スタッフは
冷たくて、高飛車な態度のことが多く、いい印象を持つことが少なかった。
だから、アフリカやアジアから来た同じ立場のスタッフと一緒に働いているのが楽しかった。

◆イギリス人の意識と福祉現場
イギリス人は個人主義、過剰に干渉されるのも嫌がる。
良い意味で「人は人、我は我」の精神がある。

この精神は、福祉や介護の場面でも見られ、
クライアントがHELPを出していたりするのに、
「わたしは今気分がのらないの」とか言って断ったり、
自分のことを優先して後回しにしたりすることがあった。

僕としては「もうちょっとできるやろ」「つめたすぎやろ」
とか思ったけれど、そんな折に、
『介護をする側と介護される側の両方の権利が
守られていることが大切なんだ』と言われ、
考えさせられた記憶がある。

日本人は“和”を尊重し、集団主義的なところがあり、
空気を読む、サービス精神や自己犠牲の精神などがあります。

そのような背景も影響してか、日本では労働者側の権利が
軽く扱われがちになることが多いと感じる。

特に福祉業界では、労働者のサービス精神や
ボランティア精神に支えられているように思う。

福祉先進国はスウェーデンやデンマークなど北欧の国々ですが、
福祉労働者の立場が守られているイギリスは福祉の伝統国なんだ
と考えさせられた。

僕がイギリスに行ったのは、10年前になるけれど、そこから
日本の社会福祉現場はどこまで変化・発展したんだろう、
次のまた10年はどのように歩むのだろうと、ぼんやり考えた。

Writer:徹
元京都ユースホステル協会職員、建替直前の宇多野ユースホステルで業務にあたる。
様々な福祉現場で働いて、現在は特別支援学校で働いている。

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