■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~
ロシアの伝統料理『ピローグ』
旅と仕事を両立できる仕事はたくさんありますが、その中の一つに日本語教師があります。
海外に住んで、そこで働きながら、現地の人々と交流したいという人にはうってつけの職業だと思います。そんな思惑を心に秘めて日本語教師になってしまった私が、今回ご紹介するのは、ロシアで働いていたときに食べたピローグという料理についてです。
料理についてお話しすると言っても、残念ながら私は料理が苦手で、おまけに味覚音痴、さらにひどい面倒臭がりなので、ロシアでは茹でたジャガイモとか即席麺(ロシアにも売っています)など、毎日ろくな物を食べていませんでした。そんなことを、ロシア人の友人にふと話したことが切っ掛けで、彼が私のための毎週料理教室を開いてくれることになりました。
彼が教えてくれた料理は、簡単なロシアの田舎料理が中心で、不器用な私でも作れるものばかりでしたが、時には少し手の込んだ料理も教えてくれました。そんな料理のひとつが、今回紹介するピローグです。
ピローグという名はあまり聞き慣れないと思いますが、日本でも有名なピロシキは、ピローグを小さくしたものです。ですから、ビッグサイズのピロシキだと考えてください。そこで、少し遠回りですが、まずはピロシキの説明からしておきたいと思います。
日本でピロシキと言えば、油で揚げたものを想像されると思いますが、ロシアでは油で揚げたものだけでなく、オーブンで焼いたものもあります。そして、観光でロシアに行かれるとむしろ焼いたピロシキを目にすることの方が多いかも知れません。地域差もありますが、若い女性は「焼いたピロシキが好き」という人が多い気がします。
ピロシキの具もさまざまで、挽き肉や野菜の炒め物だけでなく、マッシュポテトやお米などが入ったものもあります。また、忘れてはならないのが、果肉やジャムが入ったピロシキです。ピロシキというのは、実はとても多様で、日本で知られているものは、ほんの一例に過ぎないということを、まず知っておいていただきたいです。
さて、ピロシキの親分のピローグについてお話しを戻しましょう。ピローグは、ピロシキと違って焼いたものしかありません。30センチ以上の大きさがありますから、そもそも油で揚げるのは厳しいですね。具はピロシキと同じように多様で、ジャムや果肉のピローグは、一見するとパイのように見えます。では、実際に挽き肉のピローグの作り方を簡単に紹介しましょう。
①最初に生地を作ります。まず深い鍋を火にかけてバターを溶かして、そこに牛乳を入れ、人肌まで温めます。次に砂糖とイースト菌と卵を加えます。そこへ小麦粉を少しずつ足しながらこねていき、手に付かなくなったら生地の準備は完成です。イースト菌が活動しやすいように、鍋に蓋をして30分程度おいておきましょう。
②その間に具を作ります。まず玉ねぎをみじん切りにしてフライパンでしっかり炒めて皿に移します。次に細く切ったニンジンに油をよくからめてフライパンで炒めます。先に炒めた玉ねぎとニンジンを混ぜ、ニンニク、コショウ、パプリカ粉を加えてさらに炒めます。炒めたものをボールに移し、これに挽き肉と塩を加えて混ぜれば具は出来上がりです。具はオーブンで焼くので、挽き肉は生のままで大丈夫です。
③生地に具をのせていきましょう。イースト菌のおかげで生地が膨らんでいます。【写真↓左】
この生地の三分の一をちぎって土台を作り、その上に先ほどの具をのせます。【写真↓中】
残りの生地の半分を使って覆いを作り、それを具の上にのせて、土台でくるんでいきます。【写真↓右】
その上に残り生地を使って飾り付けをします。甘いピローグの場合は、
この飾りの上にジャムなどがのっているので、一見するとパイのように見えます。
ロシア人の大きな手よりも大きいんです!
生地の表面に溶いた卵を塗ってから、オーブンで30分ぐらい焼きます。
オーブンの火力や生地の質によって焼く時間はまちまちなので、
焼けているかときどき確認します。そして、焼き上がりはこんなに大きくなります。
④いただきましょう!
ピローグを切ると中から肉汁が出て来てすごく美味しそうです。
食事中におしゃべりをしないのがロシアのマナー。
食後にロシアン・ティーを飲みながら談笑しましょう。
ロシアン・ティーのお話はまた別の機会に。
昨今の情勢やソ連のイメージで、何かと怖く考えられがちなロシアですが、
そこに住んでいるのは、とても恥ずかしがり屋で、世話好きで、心優しい人たちです。
そしてあまり知られていませんが、ロシアはすごい親日国なのです。
機会があればぜひ訪れていただきたいです。
Writer:小原 雄次郎
1973年生まれ。地理と旅行好きが高じて、
海外や国内各地を転々としながら
日本語教師や高校教師などをしている。
そろそろ落ち着きたい。