【協会】旅のあれこれ『石垣島ハードコア・ダイナー』



■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~

旅のあれこれ 『石垣島ハードコア・ダイナー』



旅を楽しむ中で、食事は欠かす事の出来ない要素です。
それは味もさることながら、その土地ならではの雰囲気が大切なのではないかなと思います。

その日僕は、夕闇の町の中を自転車で駆け巡っていました。
石垣島最後の晩餐にふさわしい「食堂」を探していたのです。
しかし、決して沖縄料理が食べたいわけではありません。
あくまで、沖縄らしい食堂で「旅情」を感じていたかったのです。

観光客向けのいかにもな沖縄料理屋はいくらでもありましたが、
僕が求めていたのはそういうのではないのです。

座敷で作業着のおっさんが昼から酒飲んで寝てるような、
横のテーブルで謎の子供が宿題しているような、
スラムダンクが載っている頃のボロボロのジャンプが置いてあるような、
床の真ん中で犬が寝ているような、
メニューが「そば」「やきそば」「ごはん」しかないような、
(しかも、やきそばは手が痛いからできないと言われた)
そんなどっしりとした世界観を持つ、沖縄食堂を求めていたのです。

しばらく自転車で走った頃、繁華な地域のはずれに一件の食堂を発見しました。
明らかに周囲から浮いている真っ青な外壁、看板には「トニーそば」の文字。

…。

こやつできる…。


外観から出る「スゴ味」が違います。

こいつは間違いない。
早速入店すると、店内もカオスそのもの。





店内では、威勢のいい日焼けのおっちゃんが観光客らしきカップルに絡みまくっています。
どうやらおっちゃんが店主な模様です。

おっちゃんはこちらに気づくと

「いらっしゃいいいい!何にする?」
「トニーそばってのがあるよ!」
「にいにはどっから来たね?」
「ロンリープラネットわかる?この店は6回載ったよ!」
「おっちゃんは船乗りで世界中行ったよ!」

などなど、聖徳太子も困惑するレベルのマシンガントークを展開してきました。
相手のレスポンスを待たずに次の話するタイプです。

とりあえず会話の切れ間にトニーそばを注文し、おっちゃんの話を受け流していたところ、
外からさっきとは別のカップルがこちらを覗きこんでいました。

そこをおっちゃんに見つかったから、さあ大変。
訳もわからぬまま絡まれまくっています。
困惑するカップル。
どうやらアジア系の外国人のようです。

さすがのおっちゃんも外国人は無理か…?
と観察していた刹那、おっちゃんがこっちを向いて

「にいに、英語は出来る!?」

「あ、はい、少しなら」

「通訳して!おっちゃん全然英語わからない!」

僕がするのかよ!
世界中回ったんじゃないのかよ!

そんな心の叫びも虚しく、流されやすい僕は通訳に勤しみました。
仲良くなってユースの宣伝もできたし良かったけど。

そんなドタバタですっかり注文したそばを忘れていたのですが、
いつのまにかテーブルの上に届いていたらしく、すっかり伸びきっておりました。

ぬるいそばをすすりながら、思いました。
これぞ、沖縄の食堂。

皆様も沖縄に行った際は、是非地元の食堂に挑戦してみてください。
意外なハプニングや、出会いがあるかもしれません。



Writer:新倉 遊
1988年生まれ。名前を読んで字の如く、
沖縄・奄美・欧州・東南アジアを遊んで周っておりました。
夢は世界一周と自分の宿を持つこと。素潜り大好き。
現在京都ユースホステル協会職員。

カテゴリー: ニュースリリース, 旅(ホステリング), 記事/旅紀行   タグ:   この投稿のパーマリンク

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