■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~
『ロンドン・ナイチンゲール博物館』
ご無沙汰しておりました。
ユースホステル内で「イギリスのアート文化といえば」
という存在になれることを密かに目論んでいるオザワです。
前回(http://yh-kyoto.or.jp/?p=9881)の投稿から早1年。
憧れていた「アートが導入されている病院」を訪問する、
それを実行するために渡英して訪れた
“Evelina London Children’s Hospital”の続き。
結論から言うと、訪問は失敗しました。
事前に訪れたい目的など、英語でメールを送信していましたが返信は来ておらず、
直接行ってみるしかない!と訪れてみましたが、案の定受付で断られてしまいました。
後から知ったのですが、やはりコネクションがなければ診察以外で
見学に入ることは難しいらしく、入る際も母国で犯罪経歴等が無いことを
証明する証明書が必要など、綿密な準備が不可欠だそうです。
受付の職員さんには「今度は電話でアポイントを取れば
入れるかもしれないから、番号あげるよ」と手渡されたものの、
その時の私は立ち去ることしか出来ませんでした。
慰めに、Evelinaのある聖トーマス病院の敷地内に建っている
『フローレンス・ナイチンゲール博物館』を訪れました。
この聖トーマス病院は、ナイチンゲールがイギリスに
初めて設立した看護学校がある場所なんです。
たまたま訪れた博物館でしたが、不思議の国のアリスの世界のような迷路を歩きながら、
ナイチンゲールの幼少時代から紹介されている演出は、
まるでアトラクションにいるかのようなワクワク感がありました。
茂みの小さな穴を覗き込むと、ナイチンゲールの当時の写真が見られたり、
聴診器に耳を当てると、ナイチンゲールの肉声が聴こえてきたりと、
子どもが五感で学べる要素が散りばめられていました。
博物館を見学して感じたのは、イギリスという国の
医療の歴史に対する誇りや尊敬の念。
クリミア戦争時、負傷した兵士たちの宿舎に着いたナイチンゲールは、
そのあまりの劣悪な環境に心を痛め、まず始めに宿舎の清掃から取り掛かります。
▲クリミア戦争コーナー、戦時中の音がBGMでずっと流れています。
▲ナイチンゲールの夜回りのランプ
この行為は時のヴィクトリア女王に大変評価されたと言います。
館内にはナイチンゲールが来る前と後の宿舎の
『ビフォーアフター』の資料も展示されていました。
この「患者その人の看護以前に、その人のいる環境に心を配る」こと。
現代の病院にアートを導入するというイギリスでの取り組みには、
この精神が少なからず受け継がれている気がします。
病院見学は叶いませんでしたが、ナイチンゲール博物館を訪れたことは
十分な収穫になりました。
余談ですが、この失敗から数年が経ち、
「まずは日本で、アートを取り入れている病院を知ろう!」
と思い立ちました。
そんな取り組みをしている病院が世の中にあることを知ってもらえれば、
望む声が生まれ、日本でもより積極的に取り組まれるようになるのではないか。
そう思い、広めるためのトークイベントを職場である
宇多野YHで時々開催するようになりました。
すると、「このイベントのために見学をしたい」とお願いした
いくつかの病院を見学させて頂けることに(!)。
見学させて頂いた病院は、実際にイベントで紹介しています。
いつの日か、イギリスの病院も見学できる日が来ることを信じて、
広める活動を続けていきたいと思います。
Writer:おざわ ありす
1991年生まれ。生まれてはじめて訪れた国は、高校時代に美術研修で訪れたドイツ・ベルリン。
アート、デザインを通して社会をよりよくしていくような取り組みに興味があります。
日本、京都のアートシーンに興味を持って宇多野ユースホステルへ。
訪れる方の案内窓口のような存在になりたいと日々勉強中。