【協会】旅、時々ユースホステル『夢みるジュラ紀、クリスタル・パレス・パーク』



■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~

『夢みるジュラ紀、クリスタル・パレス・パーク』


二度目に訪れた英国・ロンドン。
今回どうしても訪ねたかった場所がありました。
それが「クリスタルパレス・パーク」です。

「水晶宮」というと、歴史の授業で聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。
第一回万国博覧会がロンドンで開催された際に建設された鉄骨とガラスで作られた建物、
それがクリスタルパレスです。

移設するも1936年に火事で全焼してしまい、
現在跡地がある場所が「クリスタルパレス・パーク」となっています。
なぜ訪ねたかったのかというと、理由はとある“生物”たちに会ってみたかったからです。

150年を生き抜いた“静物”たち―クリスタル・パレス・ディノザウルスです。

1850年代、チャールズ・ダーウィンよりも先に、
まだ早熟な研究を元に創られた巨大恐竜模型たち。

池に囲まれた小さな島の上に、彼らはいました。



目の前に立ったときの心境を一言で表すなら、「怖い」でした。
子どもの頃にここへ来ていたら、きっと泣いていただろうと思います。
(実際、散歩中の地元の小さな男の子が「マミーッ、マミーッ」と
絶叫に近い勢いで泣いている横を偶然通りかかりました…)



けれどその子よりも長く生きている大人たる私は、
何故怖いのか、怖いと思いながらも、そのディノザウルスの前に立ち
(最初はそれでも目を逸らしていました)じっと観察することができました。

まず、その肌感です。
150年を経た石造りの肌は、薄い緑がかって朽ちていました。
その「時の流れ」は、何億年も前の彼らを彷彿とさせるのに十分な迫力を放っていました。





よくできた現代の模型よりも、「在りし日」を感じる
その古く重量のある肌は、遠目で見ても鳥肌が立ちました。

そして、そんなにも生き物然とした彼らが確かに「人によって生み出されたもの」
だと意識すると、不気味さを覚えました。

先ほど触れたように、まだ恐竜の研究が発展途上の時代に創られた彼らは、
当時の学者たちの想像力、“夢”をかき集めて作られたのではないかと思います。

私たちが見慣れている、図鑑に見る完成された肉体の恐竜とはちがい、
どこか「子どもが憧れて描いたモンスター」のような、
現実の生物の型をはみ出しているように思えました。
(ちなみに一番大きな恐竜の鼻に角が生えていますが、その後の研究で
親指の爪の化石を角と誤っていたことが分かったそうです。)

他にも、大木に抱きつく巨大アリクイの姿も、目に飛び込んできた瞬間、鳥肌が立ちました。
しかしまさに、私が見たかった・体感したかったのはこの「不気味さ」でした。

望んでいた非日常を十分に味わうことができました。
けれどこの公園は、もちろん「公園」であるからには、地元の子ども連れのママさんたちや、
電動車椅子に乗ってお喋りするおばあちゃんたち、ジョギング中のおじさんがいると思えば
ベンチで静かに読書をしているおじさんや、首輪もなくご主人と散歩を楽しむ犬たちなど
そこそこ賑わっている、まさに地域の人々に愛されている公園でした。
(パーク内にはだだっ広い野原や、アスレチック広場、そしてイギリス一の規模を誇る迷路、
そして水晶宮跡地などがあり、一日過ごせる場所です。)



彼らにとってあの恐竜たちは、今もこれからも、いつもよく見る顔なんだと思うと、
第一印象の不気味さや怖さの角がとれ、愛らしく思えてくるから不思議だと思いました。
(そしてそんな距離感にいる彼らが少し羨ましくなりました。)(続く)



Writer:おざわ ありす
1991年生まれ。生まれてはじめて訪れた国は、
高校時代に美術研修で訪れたドイツ・ベルリン。
アート、デザインを通して社会を
よりよくしていくような取り組みに興味があります。
日本、京都のアートシーンに興味を持って宇多野ユースホステルへ
訪れる方の案内窓口のような存在になりたいと日々勉強中。

カテゴリー: ニュースリリース, 旅(ホステリング), 記事/旅紀行   タグ:   この投稿のパーマリンク

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