【協会】旅、時々ユースホステル『世界は狭い話』



■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~

『世界は狭い話』

英国はロンドンに到着して、翌日。
世界的なファッションブランド店が立ち並ぶスローン・ストリートを有する、ロンドンの流行発信地スローン・スクエア。
その同名駅から徒歩数分のサーチ・ギャラリー(Saatchi Gallery)を訪れました。

サーチ・ギャラリーは、現代アートを専門に展示している美術館で、
特に、イギリス国内・国外の若手アーティストの発表の場、
常にまだ世に出ていない才能を発掘している美術館として有名です。

イギリスでは、ほとんどの主要な美術館・博物館が入場料無料です。
市民の税金や寄付、ミュージアムショップの収益などのお金で運営が保たれています。

ホームステイ先のお母さん曰く、
ロンドンの若者は雨宿りがてらに美術館や博物館に入る習慣もあり、
若者にとって芸術は親しみ深いものだよと教わりました。

文化を重んじる国柄であり、けれども人々の手から遠い「高尚なもの」ではなく、
あくまで身近な存在だということが、とても好ましく思いました。

刺激的な作品たちを無料で観られるし、
よちよち歩きの子どもからご高齢の方まで、幅広い世代の人々が訪れている印象でした。





また、日本とこちらの美術館の違いとして大きいのは、
日本よりも写真撮影可能な場所が多いところです。

もちろん、すべての美術館で撮影可能という訳ではないので、注意が必要です。

サーチ・ギャラリーを堪能した後、続いてV&A博物館へ向かおうと歩を進めると、
駅前が賑やかなことに気が付きました。

スローン・スクエア駅前で、Salvation Army
(日本では“救世軍”の名前で知られています)の
ブラスバンドが演奏していました。



ちょうど、クリスマス前の時期。
ミスタービーンの”Merry Christmas”で観たことのある演奏シーンと重なって、
イギリスらしい光景に出会えたことにしばし感動していました。

演奏が終わり、拍手を送ったあと
バンドの方の一人が持っていた募金箱へ募金しました。

黒人のその彼は、にこにこと優しい笑顔で挨拶を交わしてすぐ
「もしかして日本人?」と尋ねてくれました。

そうですと答えると「息子は日本でゲーム会社に勤めているんだよ」と意外な答えが!
よくよくお話を聞いてみると、息子さんは京都の任天堂で働いているとのこと。

実は、私の友人のアメリカ人も任天堂に勤めていました。

日本~その中の京都~友人のいる会社、
と次々に発覚した彼の息子さんとの共通項。
一瞬にして彼との間にご縁を感じ、親近感を抱きました。

「地球って小さいねぇ」
口を揃えて、そんな言葉を繰り返し笑い合いました。

テレビやインターネットを通して、リアルタイムに世界中の情報が得られるようになり、
「世界は小さくなった」という表現を耳にすることも増えたように思います。

けれど、私は旅先で「自分の身近なできごと」と結びつく出会いの瞬間に、
「世界は、思っているよりもうんと狭い」と、文字通り肌で感じることができました。

そんな「世界は狭い話」を、ロンドンでの印象深い出会いを通して書き起こしてみました。



Writer:おざわ ありす
1991年生まれ。生まれてはじめて訪れた国は、高校時代に美術研修で訪れたドイツ・ベルリン。
アート、デザインを通して社会をよりよくしていくような取り組みに興味があります。
日本、京都のアートシーンに興味を持って宇多野ユースホステルへ。
訪れる方の案内窓口のような存在になりたいと日々勉強中。

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