【協会】旅、時々ユースホステル『小豆島・高松 フェリーの旅(前編)』



■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~

小豆島・高松 フェリーの旅(前編)


その晩、私は悩んでいた。
1月中旬、私は翌日からの3連休を控え、悩んでいた。
旅に行くべきか、行かざるべきか。
行こうよという自分と、だるいし疲れているというもう1人の自分がいる。
あるいは明日1日は休み、明後日から2日間で旅をするか…。
…。
ええい。
私は悩む自分を半ば強引に引っ張り、アパートのドアを開けた。

***
午前0時、神戸三宮駅。
神戸港へのバスが来るまであと30分。私は地下街をぶらついていた。
シャッターが下ろされ人通りの無い通路は煌々と照らされ、
不思議な廃墟に残されたような気分になる。

神戸港からフェリーに乗って小豆島に行き、
そのあと四国本島に向かう。これが今回の旅。

神戸港からのフェリーは、平日だと1日3便出ている。
うち2便は朝便・昼便で、3時間20分で着く。
もう1便が今回乗船する夜行便で、神戸港を1時に出発し、
高松を経由したのち7時に小豆島に着く予定になっている。

神戸港へ向かうバスが来ると、私を含めて4人が乗った。
若い兄ちゃん2人と、もう1人は若い女性。

旅行シーズンも過ぎたしやっぱり人も少ないんだろうかと思うが、
神戸港に着くと思ったより多くの人が待合室にいた。

アナウンスが流れ船に乗り込む。
船は大きくはないものの、1階から2階に昇る階段は
ガラスの壁にシャンデリアのような照明があり、思ったより高級感がある。
(ちなみに、このジャンボフェリー、客室内は撮影禁止だったので写真はない。
イメージを知りたい方は公式サイトに詳しい写真があるので、そちらを参照されたい。)

慣れた手つきで貸し出し用のゴザを並べて横になる人、
なんとも言えない品ぞろえのゲームコーナー、
20年ほど前のタイトルが並んだマンガ棚…
ひとしきり船内を観察したあと、女性専用スペースに入った。

主に朝便・昼便の人が使うであろうリクライニング席と、
横になりやすいカーペット席がある。
ゆるやかな波と高揚感に揺られていると、
いつの間にか寝入ってしまっていた。

***
朝になると、アナウンスが流れ出す。
実は昨晩もアナウンスがあったのだが、
積み込みに時間がかかったそうで、出港時間が遅れ、
到着時間もやはり遅れるとのことだった。

小豆島は東西に長く、7つの港がある。
このジャンボフェリーは、そのうち南東に位置する坂手港に到着する。
レンタカーを借りたあと、そのまま島南側を横断し、
途中オリーブ園に立ち寄り、南西側の土庄港から
高松行の船に乗る。これがざっくりとしたプランだった。

朝8時過ぎ、小豆島で降り立つ人は、思ったより少なかった。
そして、坂手港は、思ったよりこじんまりとした、
売店もコンビニも見当たらない、生活のための港といった様子だった。

霧雨が降る中、ほかの客は早々に迎えに来た車に乗り込み、
私だけが取り残されてしまう。
しかし小豆島マップによれば、レンタカーはすぐそこで借りられる!

「木曜 定休日」

まさしく木曜、開くことのないガラス戸を見ながら、
定休日を書いていないマップと再度にらめっこをする。
レンタサイクルはキャリーケースがあるから今回は不可。
道沿いに進むとホテルがあり、そこでもレンタカーのサービスがあるようだ。

霧雨の中、人気のない朝の道を歩き、ホテルにたどり着いたが…。
「宿泊者向けのサービスとなっております」
「…」
流石に疲れてきていたが、己の計画性の無さのせいでもある。

今まで行き当たりばったりの旅が成立してきたのは、
自分の力ではなく、手厚いサービス体制があってのことだと思い知らされる。

仕方ないので、路線バスに乗ることにした。

幸いだったのは、一番近いバス停が、小豆島の観光スポットの一つ
「醤(ひしお)の郷」の近くだったこと。

時間があれば見ようと思っていたのだ。
オリーブが有名な小豆島だが、醤油や佃煮の工場が未だ数多く残っており、
見学できるようになっているところや、
資料館を開設しているところもあるのだ。

ただし、こんな状況だったので余裕がなく、
後から見返すと朝から1枚も写真を撮っていなかった。

9時オープンのお店が近くにあったので、開店を待ち店に入る。
このとき、船が遅れてよかった―と思った。
時間通りだったらあと1時間待たねばならなかった。

開店後、醤油ソフトクリームを買って、イートインスペースに腰掛ける。
やっと屋根と椅子のあるところにたどり着き、少しほっとする。

味は想像通りの「醤油のソフトクリーム」。
しょっぱ過ぎず甘過ぎず、まとまった味だ。

その土地の名物を見たり食べたりすると、
旅に来た達成感が少し満たされる。

ちょっと予想外の経路になったが、まだ朝9時過ぎ。
気を取り直して次の目的地に向かおう。

目的地のバス停「オリーブ園」で降り立つと、
にわかに雨が止み、天気が回復してきたのだ!

瀬戸内の天気は変わりやすいと聞いたことがあるが、
これがそうなのか…?



ともかく天気とともに気分も上がり、園内を散策。
80年代まで使われていたという手回し式の大きな石臼。
約1世紀前に植えられた、産業用として日本最古のオリーブの原木。
今はもちろん安定的・効率的に生産しているのだろうが、
収穫までの工程を考えると、国産オリーブオイルが高価なのもうなずける。




オリーブ園内のレストランでは、
その国産オリーブオイルを使用した料理が楽しめる。

「オリーブご飯と白身魚の洋風ひしお丼」を頼んだが、
メインの白身魚よりも茹で野菜のほうが強烈に印象に残った。

オリーブオイルをかけていただくのだが、
我が家の安いオリーブオイルと異なり、
オイルなのにさらっとしていて、癖がない。

もちろんドレッシングの様に味がついているわけでもないのだが、
野菜を引き立てている。シンプルに美味しい。
ごまかさずに美味しいのだ。

「おおーっ」
食べ終わったサラリーマン3人組が、外を見て歓声を上げる。
小高い丘の上のレストランからは、
穏やかな海とともに美しい晴れ間が見えた。

同じ晴れでも、土地によってその表情は変わる。
瀬戸内の空からは、海と同様に柔らかい日差しが降り注いでいた。

「外に出て写真撮っていいっすか?」
店員さんに許可を取ってはしゃぐおじさん3人組が微笑ましかった。



オリーブ園から、そのまま歩いてオリーブ公園に向かう。
名前が似ていてややこしいが、オリーブ園は民間の観光農園、
オリーブ公園は道の駅である。

どちらも入場料は無料。
しかし、道の駅と言っても一般的なイメージとは異なり、
その名の通り自然が多い。

なかでも有名なのが、この風車。
近年では「魔女の宅急便」のような
写真が撮れるスポットとして人気で、
ほうきの貸し出しも行っている。




また、実際に「魔女の宅急便」の実写映画で使われたお店も存在する。
残念ながらニシンのパイは売っていないが、
ドライフラワーやハンドメイドのアクセサリーが並んでいて、
可愛いらしいお店になっている。


▲魔女の宅急便のお店とは違うが、このような可愛い建物がありこちに建っている。

そのほか、小豆島と姉妹島提携を結ぶギリシャ・ミロス島の縁から、
ギリシャにちなんだ建物や像も多かった。



昨日悩んだまま出かけなかったら、
見られなかったモノ、食べられなかったモノ。
しないよりはしたほうが良い。
が、早めの行動も重要だと学んだ私は、
早いうちに小豆島を出発し、18時前には高松港に到着した。





さて明日はどこに向かおうか?
まずは予約したゲストハウスを目指そう。

(つづく)


Writer:Sachiko Tajiri
今回エッセイを書き起こして、改めて自分は写真撮らないんだなって思いました。でも召喚獣が降りてきそうな雲の渦の写真は、お気に入りです。
現在京都ユースホステル協会職員。

過去の記事
そうだ、鹿児島に行こう/^o^\(後篇)
そうだ、鹿児島に行こう/^o^\(前篇)
目的地としての関西空港(周辺)紀行

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