【協会】旅のあれこれ『ボーイズ・イン・パブリックバス』



■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~
旅のあれこれ『ボーイズ・イン・パブリックバス』


旅は、未知との遭遇の連続であります。

文化・人種・歴史、そして人。
全く違うものと触れ、感じることが
旅の醍醐味であり、価値かと思います。

僕が旅をしている時、つい僕だけが
未知と触れ合っていると思いがちですが、それは違います。

僕と接している人たちも、また
僕という未知に触れているのです。

という訳で今回は僕の旅の話ではなく、
旅の中で未知とふれあう人たちを観察したお話。

夜勤明けに必ず銭湯に行くほどの風呂ジャンキーの僕が
オススメする京都でも有数の銭湯が、大徳寺の近くにあります。

京都本などで多数取り上げられているので
知らない方の方が少ないと思いますが、
「船岡温泉」という銭湯です。
http://funaokaonsen.net/(公式サイト)

大正時代に作られた料亭を昭和になってから
銭湯に改築したゴージャスな建物で、
登録有形文化財にも指定されております。

中も普通の銭湯とは思えないほど豪華で、
庭に鯉の泳ぐ池があったり、露天風呂まで
完備されているという、スーパー銭湯ならぬ
ハイパー銭湯なのでございます。

そんな船岡温泉、京都はもちろん全国、
最近は海外からのお客さんも珍しくなくなっています。

家からはバイクでも20分近くかかるのですが、
結構足しげく通っておりまして、なんだかんだ
月に一回は行っていると思います。

先日も平日休みなのをいいことに、
昼間から風呂に出かけました。

ここの露天風呂は、男子の脱衣所と
洗面所が見える構造になっておりまして、
風呂から何の気なしにそちらを見ていると、
なにやら外国人が入って来るのが見えました。

しばらくすると、外国人4人が服を脱ぎ終わって
洗面所に向かっていきます。

体格の良い若者たちでした。
洗面所は昔ながらの押している間だけ
水が出るタイプの蛇口なのですが、
彼らは初めてなのか、なにやら戸惑っている様子です。

さて、どうするのだろうか。

少し考えてから手に水をつけて
ぺたぺたと体をぬぐい始めました。

水ジャー→手に少しだけ水をつける→ぺたぺたとぬぐう。
それを何度も繰り返しています。

多分ガイドブックか何かに
「SENTOでは風呂に入る前に体を流すこと」
とでも書いてあったのでしょう。
でも違うんだ、それ、そうじゃないんだ…。

彼らもどう見ても納得いってない様子なのですが、
それでも必死でぺたぺたを繰り返しています。
4人全員、無論、全裸で。
シュールとか滑稽というのを通り越して、
ある種の哀切を感じる光景です。

もうその時点で声をかけてあげようか迷ったのですが、
なにぶん距離もあったのでただ見るに留まりました。

その後、その4人は無事風呂場へ入っていきました。

しばらく風呂に浸かった後、露天風呂から館内へ入った時、
またもや彼らと出くわしました。

ちょうど入口から一番近いところに「薬湯」という
1.5m四方ぐらいの小さなお風呂があるのですが、

(´・ω・)(´・ω・ `)(・ω・`)(´・ω・ `)

こんなかんじで全裸の白人男性4人が小さなお風呂に
ぎゅうぎゅう詰めになっておりまして。

そう、彼らです。
たくさん浴槽がある中、どうすればいいのかわからなかったのか。
はたまた入口から順番に入るのがセオリーと思ったのか。

全員、無表情。

違うんだ…それはそうじゃないんだ…。

さすがに可哀想に思い、通りすがりに
「最初に身体流せば、あとは先に入っていいんだよ」
と教えてあげると、「oh …」とか言いながら
全員上がり出したのも大変滑稽でした。

その後も自分が上がるまで
何となしに見かけたのですが、
サウナと水風呂を狂ったように往復していたので
楽しんで頂けたのではないかと思います。

面白いものを見たと思うと同時に、
彼らのチャレンジ精神にとても感心しました。

全く未知の文化の中で最も
ナイーブな部分をさらけ出すなど、
なかなか出来ないことです。

もし困っている外国人を見かけたら、
少し勇気を出して声をかけてあげてください。
目の前で戸惑っている彼らは、果敢に
未知へと挑戦しているのです。

そして彼らに声をかけることは即ち、
あなた自身の未知の扉を開くことに繋がるのです。

ちょっとした勇気が、あなたを思いもよらない
世界に導いてくれるかも知れません。



Writer:新倉 遊
1988年生まれ。名前を読んで字の如く、
沖縄・奄美・欧州・東南アジアを遊んで周っておりました。
夢は世界一周と自分の宿を持つこと。素潜り大好き。
現在京都ユースホステル協会職員。




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