■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~
旅のあれこれ『ダンブッラ歌謡祭』
「旅」と「旅行」の違いの一つは、
ローカルの人たちとの関わり方の違いと思っております。
家族や友達、恋人と快適に過ごす事に重点を置き、
ローカルの人々にお金を払って様々なサービスを受けるのが「旅行」
ローカルの人々の暮らしを彼らと同じ目線でのぞき見させてもらうのが「旅」
どちらが良い悪いではなく、スタイルの違いなのかな、と僕は思います。
今回のスリランカ旅行でも、そんな一幕がありました。
先日、また少し長いお休みを頂き、インド洋に浮かぶスリランカに行ってまいりました。
世界一周ブロガー、さおちゃんとバイクで各所を周るという今回の旅。
世界遺産にも登録されているシーギリヤロックを見るため、
ダンブッラという町を訪れました。
翌日早朝からシーギリヤロックを訪れる予定だったので、
早めに飯食って飲んで寝ようということになり、
宿に荷物を置いて街へと繰り出しました。
スリランカでは仏教の影響が強いせいか、
基本的にあまり飲酒の習慣を公然にしない様子でした。
そのため高級店を除くと食堂やレストランでお酒を提供している所は少なく、
必然食事とお酒を分けることとなります。
この日は接客態度の悪さ暫定一位のレストランで、
爆盛りチャーハンをやっつけてから軽く一杯飲みに出かけました。
どうも飲酒という文化がインモラルに捉えれているスリランカ。
後ろめたさからなのか、どこもとっても怪しい感じのお店。
しかも入口から店が見えないタイプが多く、
唯一オープンな感じだったバーに入りました。
あくまで全体で一番マシ、というだけで怪しさは全開です。
おじさまと刺青だらけのヨーロピアンしかいません。
とりあえず蚊の猛攻を受けながらビールにありついていると、
店の奥から奇怪なBGMが聞こえます。
どうやらバックヤード?のようなところから響いているようです。
遠目にかなりハードコアな地元のおじさま達が見えます。
普通なら絶対近づいてはダメなやつです。
しかし、プロ旅人のさおちゃん、
「あれ、入れるんじゃね?」とか言って様子を見に行ってます。
やめなさいよあなた。
そして案の定、おじさま達に誘われるさおちゃん。
マジかよ。
さすがに女子をひとりおじさまの群れに放り込む訳にはいかず、
僕も参加するハメに。
いざなわれるままに店の奥へと入っていったのですが、
もう輪をかけてきったない部屋なんですよ。
窓もない10畳ぐらいの部屋に
ビールの空きビンやケースが所かまわず置いてあるし、
壁とか湿気とカビでどす黒いし。
例えるならスパイ映画で敵に捕まって、アジトの地下で拷問を受けたりするじゃないですか。
そういう部屋です。
そういう部屋に地元のお兄さんからおじさまが10人前後、楽しげに歌って踊ってる訳です。
歌は地元の民謡?みたいな歌で、楽器はなんと椅子とゴミ箱。
僕らが部屋に入ると大歓声で歓待してくれました。
この陽気さと人懐っこさはスリランカ人特有かなと思います。
歌とリズムが始まると、踊れ踊れと激しい煽りをうけまして。
そこまで煽られると黙っちゃいられません。
レゲエで鍛えたリズム感覚を武器に、バキバキの踊りで
日本人のソウルフルさを見せつけてやりました。
場はますます盛り上がり、歌もどんどん続きます。
楽しくなってきたころ、みんながしきりに
「ジャパンの歌を歌え!」と言い出しました。
スリランカの歌って節回しがダラダラっとしてて、
単調なリズムが繰り返されるパターンが多いんですよ。
雰囲気的にしっくりくる歌が全く思いつかなかったのですが、
変に間をあけてひるんでいると思われても悔しいので、
とりあえずソウルフルなやつを選んでみました。
日本歌謡界の重鎮、
和製R&Bの女王、
そう、和田アキ子を。
途中で切れていますが、全部歌い切りました。
終わると謎の大歓声があがり、謎に全員とハイタッチしました。
ホンマなんなんやろ、ここ。
翌日早いのとおっさんたちの酔いがヒートアップしてきたので、
やたらとセルフィ―をせがまれながら退散しました。
土地の人と同じ目線で、同じ時間を共有するする楽しさ。
わけのわからないことが次々起こる旅の面白さ。
そしてなんとなくスリランカ人にも通じる
和田アキ子の偉大さを感じたダンブッラの夜でした。
Writer:新倉 遊
1988年生まれ。名前を読んで字の如く、
沖縄・奄美・欧州・東南アジアを遊んで周っておりました。
夢は世界一周と自分の宿を持つこと。素潜り大好き。
現在京都ユースホステル協会職員。
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