■ 旅、時々ユースホステル~旅やユースホステルに関するエッセイ~
旅のあれこれ『バンコク・ブラックアウト』
「郷に入らば郷に従え」ということわざがあります。
あまり好きなことわざではないのですが、
旅をしているとその土地のルールに
従わなければいけない場合もあります。
悔しいですが、それが現実というものなのです。
以前、ラオスに行った帰り道、飛行機の旅程により
タイはバンコクに一泊して帰国することになっておりました。
バンコクといえば言わずと知れたアジアでも有数の大歓楽街。
毎夜のごとくお祭り騒ぎの眠らない街です。
ラオスではなにもない田舎に滞在し、
非常にゆったりのんびりとした時間を過ごしていたので、
いっちょガッツリお酒でも飲んで
クラブにでも繰り出そうと思っていました。
▲ラオスの田舎
バンコクに入った僕は予約した宿に向かいました。
普段は安宿ですが、予算に余裕もあったため
少し奮発してプール付きのホテルを予約していたのです。
とはいっても一泊5,000円ぐらいでしたが。
ホテルは1980年台に流行ったようなデザインで、
かつて高級だったという雰囲気でした。
小指の爪だけ異常に長いレディーボーイが回しているフロントで
受付を済ませ、さっそくお部屋に向かいます。
安い部屋なので低層階ですが、バンコクの雑踏が見渡せるはず。
割と広めの部屋のカーテンを開けた瞬間、
広がっていた世界は予想だにしないものでした。
鳥?
どうみても孔雀っぽい鳥が数羽みえるんですよね。
めっちゃ鳴き声聞こえるし、何なら餌やり係のおばさんと目が合った。
恥ずかしいからこっち見んといてほしいなぁ。
「鳥小屋ビュー」って少なくとも僕の人生で出くわしたことないんですが、
まあそれが目の前に広がってるわけでございます。
これを建てた方は本当に何考えてたんだろう。
ちょっと意味がわからないのでフロントに文句を言いましたが、
ディスカウントルームは満室とかで取り合ってもらえません。
なんて宿だ…。
しかしこういうときはもう気持ちを切り替えるしかありません。
ここはタイ・バンコク。そういう流儀の街なのだと。
熱いシャワーを浴びて、街へ繰り出すことにしました。
時刻は夕刻へ差し掛かり、
帰宅ラッシュ街は人で溢れてきます。
排気ガスと機械熱の熱風をくぐり抜け、
パブの集中するエリアまで歩いて行きました。
とりあえず手近なバーで冷えたビールでも嗜もう。
そう思い周りを見渡していると、
バーの前にある札が出ていることに気づきました。
「仏教節だから今日はCLOSEだぜ☆」って意味なんですが、
補足すると、仏教節ってタイはお酒の販売が禁止されるのです。
つまりこの文言は
「仏教節だから(お酒売れないので)今日はCLOSEだぜ☆」
という意味なのです。
おいおい、マジですか。
一軒ぐらい隠れてやってないかと思ったのですが、
どこを探しても全く見当たりません。
コンビニでさえ24時を過ぎるまでは売らない方針のようです。
敬虔な仏教徒すぎるやろ…。
いつもは怪しげな人たちで賑わう界隈も、
ゴーストタウンと化しています。
そんな絶望都市を何時間もうろつきましたが、
結局全く楽しいことなく帰路につきました。
部屋に帰って、ラオスから持ち込んだ
お土産用のビールを飲みながら思いました。
今日はハズしたな、と。
でも仕方ありません。そんな日だってあるのです。
郷に入らば郷に従え。
そんな言葉を思い出しながら、ささやかな抵抗として、
ホテルの評価を最低にして投稿してから静かに眠りについたのでした。
Writer:新倉 遊
1988年生まれ。名前を読んで字の如く、
沖縄・奄美・欧州・東南アジアを遊んで周っておりました。
夢は世界一周と自分の宿を持つこと。素潜り大好き。
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